歴史
タイには何世紀にも渡って、経験主義に基づき、臨床的に実践されてきた伝統医学が存在しています。
タイ伝統医学には4つの分野があります。薬草医学、栄養医学、精神的修養手技療法すなわちマッサージ(Nuad Bo’Rarn ヌアッド・ボラーン)です。
古くはスコータイ王朝のころからあり、インドから仏教やインド文化とともにタイに入ってきたと考えられています。
北インドの王の典医で、お釈迦様(ブッダ)に帰依するとともに、仏教の発展にも貢献した、タイ医学の父と称えられる “Shiwog Gomarabat(シーウォック ゴマラバー(ト)” を創始者として、約2500年もの間語り継がれています。
彼はマッサージだけではなく、ハーブ・ミネラルを使用した治療の知識も同時に伝えています。(ハーブ玉、ハーブサウナなど)
18世紀ビルマによるアユタヤ侵略で貴重な資料を破損しましたが、西暦1836年ラマ3世が、バンコク最大の寺院 ”ワットポー” の大改修を行った際、誰でも自由に勉強ができるようにと考えて当時の様々な学術書を集めてその内容を壁に書き記しさせました。
壁に描かれたものは芸術関係が多く、医学関係ではツボを示す図が60枚、ツボを刺激するポーズ(ヨガスタイル)をとったタイの隠者の絵が80枚描かれており、また診療と薬草の調合法についての文章1100種類記されています。
これらの資料は現在でもワットポーにて目にすることが出来ます。その技法は現代まで受け継がれています。
理論(考えかた)
タイ古式は人体に “セン” と呼ばれるエネルギーラインが流れているという考えの上に成り立っています。
このエネルギーラインの考え方は、インド医学(アーユルヴェータ)にも存在しており、インドを起源とするヨガの影響を受けていることがわかります。
タイ医学理論では、プラーナと呼ばれる生命維持に必要なエネルギーがセンと呼ばれるラインを通って体中に流れているとされています。ラインは72000本もあり、それらは2番目の身体として人体を形成しています。
具合が悪いという状態は、プラーナ(生命維持に必要なエネルギー)の供給が妨害され、不足した状態と考えられ、マッサージによって刺激を与え、プラーナの流れを正常にすると改善されるといわれています。
タイ古式ではそのラインの中でも特に重要とされる10本のセンを刺激するように施術します。
6本が足部分に集中している為、足の施術が長いことが特徴です。センは目には見えないもので、解剖学上確認はできませんが、最近の研究によって、肉体や内臓に対して非常に有効であると立証されはじめています。
ヌアッド・ボーランとは?
タイ語でタイ古式マッサージのこと。
ヌアッド・・・マッサージ、
ボラーン・・・伝統・古式(タイ語訳)が合わせられています。
仏教の影響
タイ伝統医学の理論、発達、実践のすべてにおいて、仏教の影響が色濃く浸透しています。
伝統的マッサージ・テクニックの多くは、座して行う瞑想やヨーガの修行を容易にするために開発され、活用されてきました。
仏教哲学では ”慈(慈しみ)” という概念が非常に高く評価されており自他の平和と幸福を実現するためにはなくてはならない社会の基礎だと教えられています。
タイ式マッサージは四無量心「慈(親切心)、悲(哀れみ)、喜(人の身になって喜ぶ)、捨(心の平静)」の実践だと考えられ、こういった奉仕の精神が仏教を通して教えられています。